【独占インタビュー】「冬のソナタ」ユン・ソクホ監督「皆さんにとってのヒーリング、癒しになってくださったら嬉しい」映画『夏の終わりのクラシック』10月3日(金)より全国順次公開!

ユン・ソクホ監督

日本中に「冬ソナ」ブームを巻き起こしたユン・ソクホ監督が、伊吹有喜のベストセラー小説「風待ちのひと」を映画化。済州島の美しい風景とクラシックの名曲とともに紡いでいく大人の“最後の恋”を描いた『Adagio』(英題)が、邦題を『夏の終わりのクラシック』として10月3日(金)より全国順次公開となる。

多くの映画やドラマで知られる実力派のキム・ジヨンペ・スビンの2人が表現する傷ついた男女の繊細な心情に、オペラの名作「椿姫」やJ.S.バッハの「アダージョ」などクラシック音楽の調べが寄り添う。もう一度恋がしたい、もう一度恋をするなら――そんな共感とともに癒され、静かな感動と余韻に包まれる珠玉の愛の物語。

この度『冬のソナタ』をはじめ、世界的人気を誇る恋愛ドラマの巨匠ユン・ソクホ監督に、オンラインでインタビューさせていただきました!

Q.伊吹有喜さんの『風待ちのひと』が原作とのことですが、なぜこの作品を映画化しようと思ったのでしょうか?

この作品を企画したのが、ちょうどコロナ過の時期で、当時は人々と少し断絶しているような雰囲気の中で映画の企画を立てていたんです。この原作自体は、だいぶ昔に読んだ小説だったのですが、企画を立てているときに思い出して、この小説が持っている他人への関心だったり、愛だったり、そういったものが、寂しい人の心を癒したり、傷ついた心を癒すことが出来るのではないか?人々の心に届くものになるのでは?と思いました。ちょうどコロナ過の大変な時期に心に響いた作品でしたので、映画化しようと思いました。

Q.監督の作品は、若い人たちの初恋や純愛のイメージがありましたが、本作では大人の恋が繊細に描かれています。この辺の違いはどんなところでしょうか?

以前、私が描いていた作品というのは、まさに王道のラブストーリーが多かったですね。今回も「LOVE」は、もちろんあるのですが、全面的にその部分は打ち出していないんです。この作品の中には、心を病んでる女性が登場するのですが、その女性の問題だけではなく、人というのは、誰かに関心を持つこと、そして誰かに共感すること、ということが、本当に大切だなと感じているので、その点を映画の中で描きたかったんです。私も歳を重ねる中で、以前にも増してそういったことに関心を持つようになりましたので、そういった感情を拡張させるような形で、「LOVE」だけではなくて、人の感情を大切にして描く、そういう作品を作りたいと思いました。

Ⓒ2024 Yoon’s Color Inc., All Rights Reserved

Q.今回の映画では、ヨンヒ役のキム・ジヨンさん、ジュヌ役のペ・スビンさんの二人の演技がとても自然で素敵でした。キャスティングの経緯について教えてください。

まず、今回有名な俳優さんですと、どうしてもイメージが強すぎるので、そこから少し離れたところにいる俳優さんをキャスティングしたいという理由から、今回お二人の俳優さんを選択したことになったんです。ヨンヒ役には、田舎のおばさんのように見えるんですけども、演技力も大切ですので、その両方を兼ね備えているキム・ジヨンさんが、この役に合うのではと思ってキャスティングをしました。ペ・スビンさんに関しては、“まなざし”です。目を見ただけでも愁いを感じるような、愁いに満ちた目をしていて、女性たちから見ると母性本能と言いますか、保護本能を刺激するような、寂しさも称えているような、そんな目を持っていらっしゃいます。もちろん韓国では、そういった役以外も沢山されていますが、私はそういう部分を感じていましたので、このキャラクターに合うなと思いました。私がこれまで見てきた二人に対する印象を土台として、今回はお二人にお願いすることになりました。

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Q.お二人の演技に加えて、済州島の絵画のような映像美と、世界観に引き込まれるクラシック等の音楽にもこだわりがあるかと思います。監督が作品作りで大切にしていることは、どんなところでしょうか?

今回、内容的には「心の風邪」という表現をしているんですけども、心が風邪をひいている人、つまり心に傷を負った人の物語ということになりますので、どうしてもこういった作品を作る時には、雰囲気が沈みがちになってしまうと思うんです。非常に重い内容になってしまうと思いましたので、油絵に例えるとタッチというか、描くときには、もう少し軽快に描きたいなと思いました。そして音楽や映像は、叙情的なものにしたいと思いまして、その油絵を見ているような作品なんですが、そこの中には、心の痛みとか、悲しみが、バランスよく散りばめられるようにと心がけて作りました。
―選曲も監督がされたのでしょうか?
全部ではないですが、私が好きな音楽も使いつつ、音楽監督のイ・ジスさんとも相談したり、推薦してもらったものを一緒に選んだりしながら使いました。
―やはり監督自身もクラシックをよく聴かれるのでしょうか?普段どんな音楽を聴かれますか?
私は、午前はクラシックを聴いて、夜はジャズを聴くんです。(笑)その都度その時のムードに合わせて音楽を聴いています。

ユン・ソクホ監督

Q.今回撮影で苦労したシーン、大変だったシーンはどんなところでしたか?

海辺のシーンだったのですが、映画の中に海辺の家が出てきますが、あれはもともとカフェだったんです。撮影で少し借りるためにカフェの方と相談をしまして、空けてくださったんです。そして私の方で1年かけて、もともと無かった庭園も造りました。3月くらいから植物を植え始めて撮影をしようとしたところ、9月に台風が来てしまったんです。海辺なので植物も枯れてしまうような状況で、ちょうど3回台風が来たんですが、よりによって、大事な撮影の時に台風に見舞われてしまいました。でも台風のシーンはおかげさまで一回はよく撮れたんですが、他は本当に苦労したんです。せっかく庭園も綺麗に手入れをしていたんですが、ダメになってしまったりで本当に残念でした。なので一番苦労したのは、やはり台風となります。撮影日数はあまり多くはなかったんですが、台風のせいで撮影が出来なかったこともあったりで、一番の苦労でした。
―台風のシーンは、もともと設定されていたシーンだったのでしょうか?
台風の中を自転車に乗って通り過ぎるというシーンは、もともと台本にあったんです。ただ、最初は台風を想定していなかったので、このシーンは後でCGを使わなければいけないかなと思っていたんですが、実際に台風が来ました。

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Q.これまで多くのドラマを制作されてきて、映画も手掛けられています。ドラマと映画の違いについてお聞かせください。

例えて言うなら、映画は「詩(ポエム)」に例えられると思うんです。ドラマは「散文」や「小説」にあたるものだと思います。ドラマのほうは、ガイドというかディテールを多く詰め込まなければいけないという側面があり、いろんなことを説明したり、詳しくディテールにこだわって作るところがあります。映画のほうは、詩のように隠喩的というか、比喩的というか、何かに例えたり、イメージの力が非常に大事だなと思っていますので、作家主義的なことを考えますと、映画の方が作家主義的な色合いが濃いのかなと思います。

Q.映画では、心に傷を持った人物が登場しますが、監督自身は、これまで大変な時や辛い時などには、どう向き合ってこられたのでしょうか?

これは本当に個人的な話になりますが、私の場合は一人でどこかに旅に行くタイプなんです。もちろん旅行ということになりますが、国内で見知らぬ場所に行って、音楽を聴いたりしながら、心を落ち着かせるというか、心が安定するように過ごすということをしました。自然の中で、気持ちを落ち着かせるようなことをしてきました。

Q.日本で韓流ブームが起きた『冬のソナタ』から20年以上経ちますが、いま振り返ってみて思うことは?

実は『冬のソナタ』は20話の作品なんですが、それを最近編集したんです。リメイクという形にはなるんですが、もともとあるシーンを編集して2時間の映画にしました。おそらく来年あたりに日本でも観ていただけるのではと思います。ただ、これまでも『冬のソナタ』のコンサートをしていただいたりとか、私の人生から、この『冬のソナタ』という作品は離れたことがないんです。決して忘れたこともない作品ですし、本当にありがたく思っています。私も気づかないうちに、こんなに意味のある作品と出会えていたんだなと、毎年のように感じています。

ユン・ソクホ監督

Q.監督の作品で沢山のスターが生まれましたが、もう一度作品を撮りたい俳優さんはいますか?

私が撮っていた当時は、若い俳優さんたちが、今となっては中年の年代になってきていますので、私がこれから企画する作品の中で、何かその作品に合うような俳優さんがいたら、どなたか一人と、もう一回お仕事してみたいですね。誰になるかは分からないんですけど、一緒にもう一度撮りたいなという希望をいつも持っています。あくまでも作品次第となりますので、作品が決まってから決まることになると思います。

Q.今、計画していることなどは、ほかにありますか?

今も、どの映画を作ろうかと思って、あれこれ企画を立てていることころです。

Q.最後にこれから映画を観る皆さんへメッセージをお願いします。

この作品は、コロナ過の時期にヒーリング、癒しになるような映画を撮りたいと思って作った作品です。劇中には美しいクラシックも流れていますし、海や村の風景も出てきますし、人の心の温かさも感じられます。そんなふうに沢山の癒しの要素が入っている映画ですので、ぜひ映画館に来てご覧いただいて、皆さんにとってのヒーリング、癒しになってくださったら嬉しいです。どうもありがとうございました。

写真:オフィシャル提供

『夏の終わりのクラシック』映画情報

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<STORY>
夏が終わりに近づく頃、ヨンヒは毎年、済州島へとやって来る。一方、母の遺品を片付けるために済州島に来ていたジュヌ。二人が偶然出会った日の夜、ジュヌが海で溺れかけているのを助けたヨンヒは、彼の家で膨大な量のクラシックアルバムのコレクションを目にする。どうしてもクラシック音楽を教えてほしいと、必死になってジュヌに頼み込むヨンヒ。その様子はどこか意味ありげで、断り切れなくなったジュヌは庭の片づけと引き換えにクラシックを教える約束を交わすことに。ソウルでの暮らしに疲れ切っていたジュヌは、お節介でズケズケとモノを言うヨンヒのペースに巻き込まれていくうちに、少しずつ心を開いていく。だが実は、ヨンヒもまた過去に辛い体験をしていて……。人生の道に迷ってしまった2人は次第に想いを寄せ合っていくが、夏は終わりを告げようとしていた――。

監督・脚本:ユン・ソクホ「秋の童話~オータム・イン・マイ・ハート~」「冬のソナタ」「夏の香り」「春のワルツ」
撮影:キム・ヒョング『殺人の追憶』『夜の浜辺でひとり』
音楽:イ・ジス『オールド・ボーイ』『建築学概論』
原作:伊吹有喜『風待ちのひと』(ポプラ文庫)
出演:キム・ジヨン『EXIT』『シングル・イン・ソウル』、ペ・スビン「天使の誘惑」「優雅な友達」
2024年/韓国/韓国語/115分/HDサイズ/5.1ch/カラー/
原題:여름이 끝날 무렵의 라트라비아타/英題:Adagio/日本語字幕:根本理恵
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
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10月3日(金)より シネ・リーブル池袋他全国順次公開





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