両親を事故で亡くし一家の大黒柱として弟妹を育てる心優しい青年と、胸の病気を患いながらも日々を明るく元気に過ごすヒロインの、運命の出会いを描いた純愛ストーリー。2000年にTBSで放送され、日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた日本の同名TVドラマを歌とダンスを散りばめたエンターテインメント作品に仕上げた、韓国ミュージカル『Summer Snow』が11月29日（金）、兵庫・あましんアルカイックホールで初日を迎えた。同劇場では今春、本作の日本初演のステージが上演されたばかり。熱烈なアンコールに応え、一部キャストを変更してのスピード再演が実現した。主演のジンハ役には、初演よりスヒョン（U-KISS）が続投するほか、新たにソンモ（超新星）、パク・ジョンミン（SS501）を加えたトリプルキャストでの上演となる。全2幕、約2時間40分のステージは、全編日本語字幕による韓国語公演。初日を務めたソンモは、言葉の壁を感じさせない熱のこもった演技で、約2,000人の観客を魅了した。

父親が残した借金を抱えながらも細々と家業の自転車店を営み、高校生の弟ジュン、妹ウンハの面倒をみる主人公ジンハ。親代わりの生活が続くなか、20代前半にして浮いた話もなかったが、最近知り合ったソルヒとは、大好きな海の話で意気投合。以来、「いつか一緒にダイビングしに行こう！」と約束を交わすまでに親交を深めていた。そんな“ラブ・モード全開”の兄へ、「ジュン兄ちゃんも、気になる人がいるらしいよ」と耳打ちする妹ウンハ。早速ジュンを問い詰めた二人は、デートに誘うようけしかける。優等生で奥手のジュンだったが、二人に励まされチャットで知り合った女性と初対面することに。しかしデート当日、ジュンが幼い頃の事故が原因で聴覚に障害が残ったことを告げると、相手の女性はその場から立ち去ってしまった。「僕が愛を求めるなんて贅沢すぎたんだ…」。自分を卑下する弟に、「もっと大人になれ！」と厳しくあたるジンハだが、内心は悔しい思いでいっぱいだった。しかも、相手の名前を告げられ愕然とする。その名は自分が想いを寄せるソルヒ、その人だった……。

その後も、妹ウンハが不良高校生の子どもを身ごもったり(！)、青年医師ユンジェという恋の強敵が現れたり……。ジンハの周囲で次々と事件が巻き起こる。善意や悪意、様々な人間の思惑が絡み合い、先の読めない展開に引き込まれる。時に笑顔や涙を見せながら思い悩み、衝突や和解を繰り返す登場人物たち。やがて、彼らの言動が家族や友人、愛する人たちを想う心に突き動かされていることに気付くとき、物語は単なる男女のラブストーリーを超え、大きな感動作として胸に迫る。人を愛すること、命あることの尊さを思わずにはいられない。とりわけ、ジンハの思わぬ恋の顛末には、込み上げる涙を抑えきれないはずだ。果たして、それぞれの人生に待ち受ける運命、『Summer Snow』に込められた思いとは……。ハンカチ片手に見届けて欲しい！

「自然と口元に笑いが溢れる～♪」と一幕ではソルヒを想い、ニヤけ顔が止まらないジンハ。演じるソンモ（超新星）も役になりきり、彼女の前でモジモジしたり、弟に知ったかぶりのデート術を伝授したり。素顔はおっとりした印象だが、ステージ上ではくるくる変わる表情が楽しい。たびたび飛び出す日本語や得意のダンスでも場を沸かす。また、波乱のストーリーが展開する二幕では一転して、怒りや哀しみの歌声を響かせるなど、振り幅の広い演技で魅了した。一方、ライバルの青年医師ユンジェ役を演じるキム・イアンは終始、ソルヒを気遣う柔らかな眼差しが印象的だ。彼女がジンハの名前を口にするたび孤独に胸を詰まらせる、切ないバラードが聴き所。そんなタイプの違うイケメン２人に言い寄られるソルヒ役のイ・ユンジンは、品のある佇まいが清楚なヒロインにぴったり。ダブルキャストのエピより大人びた印象で、伸びのある抜群の歌唱力でも存在感を発揮した。その他、大きな身体が一回り小さく見えるほど、聴覚障害者という難役を繊細 に演じたジュン役のキム・ドヒョン、妊娠を機に逞しく成長したウンハ役のジン・ジスと、恋人イ・スヒョン役のジノ。さらに、女装あり歌謡ショーありと身体を張った“名人芸”で作品に彩りを添えたボンピル役のチョ・グムサンほか、韓国ミュージカル界の実力派が脇を固め、見応えある作品を創り出していた。

フィナーレの演出が一部変更するなどブラッシュアップした内容で贈る再演版『Summer Snow』。期間中はユンジェ役にキソプ（U-KISS）、スヒョン役にケビン（U-KISS）、ミンウ（ZE:A）が、それぞれトリプルキャストで出演。初日終演後にはソンモの希望により握手会が催されるなど、今後も気になる配役や企画が目白押し。お気に入りのキャストやイベントを目指し、何度でも観劇したくなるはずだ。（取材・文：石橋法子）