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映画監督インタビュー
INTERVIEW with BYUN-Young-joo ビョン・ヨンジュ監督インタビュー
日本でのキム・ユンジン主演の韓国映画「蜜愛」の公開に先立ち行われた、ビョン・ヨンジュ監督のインタビューの様子をご紹介いたします。
ビョン・ヨンジュ監督:1966年ソウル生まれ、ドキュメンタリー『アジアで女性として生きるということ』、『ナヌムの家』(1993)、『ナヌムの家U』(1997)、『忘れられた匠人 ヤン・ジュナム監督』(98)、『息づかい』(1999)、『地域映画史─全州』(2000)
ビョン・ヨンジュ監督のサイン入り「蜜愛」のプレス

──初めての劇映画作品に『密愛』を選んだ理由は?
ビョン監督 この映画の原作になったチョン・ギョンニンの小説『私の生涯でたった一日だけの特別な日』を読んだ時、登場人物が見事に描きこまれた物語だと思いました。特に、後ろを振り返らずにひたむきに生きる主人公たちに惹きつけられました。これこそが、今の私が一番描きたい物語だと思ったのです。

──いわゆる不倫と呼ばれる関係をある意味でポジティブに描いていますね。
ビョン監督 この映画は、これまでの古臭い恋愛教則本の類で言われていたことを覆しています。ミフンは、彼女に起きた悲劇的な出来事によって女性としてのアイデンティティを失ってしまいます。彼女はもはや人ではなく、ただ存在するだけになってしまっている。彼女にとって一番大切なことは、もう一度女性として生きることだったのです。そんな時にインギュに出会う。生きる手段として、彼女は愛することをもう一度学んだのです。彼らの愛は、激しくて、痛みを伴う、そして人に咎められる類のものでした。だけど私はこのような形の恋愛も人を成長させると信じています。もっと言えば、どんな形であろうとも愛は正しいと信じています。モラルに反した恋愛などないのです。

──『密愛』とはどんな映画なのでしょう?
ビョン監督 ここで描いたのは、"不道徳な愛"というより、むしろ"感情から生まれる愛"です。いかに激しい愛が存在しえるか、魅惑的な愛とはどういうものかを示したかったのです。こうした愛の否定できない魅力を、そしてそれは人生を劇的に変えてしまうものであることを。観客が同じ感覚を共有できる激しい恋の瞬間を描きたかったのです。
 そしてまたこの映画は、平凡な女性の一つの生き方を描いたもので、一種の冒険劇でもあると言えます。一韓国女性であるミフンが、それまで知らなかった世界に突き進んでいく姿をかっこいいと見てほしいと思います。ただし、彼女には様々な顔があって、ずる賢いような面も備えています。そんな彼女のいろいろな顔を描きたいとも思いました。

──キム・ユンジンをミフン役に選んだ理由は?
ビョン監督 多くの人は『シュリ』のイメージからか、彼女を強い女性と思うようですが、むしろ私は、自分の悲しみや痛みを心に深く秘めている人だと思っています。その部分がミフンのイメージと重なったので、ユンジンさん以外には考えられなかったのです。

──家に戻れなくなったミフンが、「写真を持っていないから娘の顔を忘れてしまったらどうしよう」と言うシーンがありましたが、彼女は二度と娘さんに会えないのでしょうか?
ビョン監督 後には彼女も娘に会うことが出来ると思いますし、彼女が娘の顔を忘れることもないと思います。あの台詞は、ミフンの喪失感を示したものです。それまで彼女が属していた"家"にあった物を、彼女はすべて失ってしまったという喪失感です。それにまた、娘はまだ小さいので、母親として娘の心の傷を思う気持ちも、あの台詞には込められています。

──映画のラスト、ミフンの独白のあと流れる曲に「ドナドナ」を選んだ理由は?
ビョン監督 「ドナドナ」は70年代にヒットした歌(※)ですが、この曲を選んだのは、反転の意味で、相反するものをぶつけたかったんです。ミフンの人生はそれまでのものとは大きく変わりましたが、それが良かったか悪かったかは、人によって見方が違うと思います。彼女自身はこれから世界に向かって前進して行こうとしています。その道に賛成できない人もいるかもしれませんが、ともかくも彼女は自分の自由意思でその道を選んだのです。そこを強調したくて、隠喩的効果を狙って、自由意思とは反するあの曲を選びました。

※「ドナドナ」は1964年にジョーン・バエズが歌ったことで世界的に大ヒットした曲。荷馬車に乗せられて売られていく子牛について歌った歌詞には、家族がユダヤの強制収容所へ送られていく悲しみが込められているが、60年代当時はベトナム戦争に送られる兵士たちにも重ね合わされた。

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